売上債権とは? 売上債権とその重要性を理解するためのガイド

売上債権 (AR) は事業を成功させるには必要不可欠なものです。 売上債権処理を効率よく管理することで、キャッ…

What is Accounts Receivable A guide to understanding AR and its importance

売上債権とは

売上債権とは、事業者からすでにお客様に商品やサービスを引き渡したものの、まだ支払われていない代金のことです。

事業体のほとんどは、商品やサービスをクレジットや現金で販売しています。 お客様はクレジットで購入した場合、商品やサービスを先に受け取ってから、請求が来ます。 ただし、支払いをするのは、通常30日以上12ヵ月以下の一定期間が経過した後でも可能です。

与信期間中、お客様が支払いをするまで、その未払い金は請求書の売上債権残高として残ります。

一般的に、売上債権で、お客様からまだ回収していない現金額が分かるので、事業の経営状態を示す信頼性のある指標となっています。

つまり、売上債権とは単に金額に注目するのではなく、事業者に対して未払いとなっている代金を回収する処理に注目する必要があるという点が重要です。 売上債権処理について検討できる対応としては、以下のようなものがあります。

  • 請求書の作成とお客様への送付
  • 請求書が支払われたかを注視
  • 未払い請求書のフォローアップ
  • 請求書の照合

通常の請求処理とよく似ているのではないでしょうか。 そうです、まさに売上債権で必要な処理と同じなのです。 また、売上債権処理は、請求処理または受取手形処理とも呼ばれます。

基本的に、売上債権は債務または取引先に対する債権として扱われます。 しかし、その金額は提供したサービスや商品の対価であるため、お客様には法的に支払い義務が発生し、貴社の貸借対照表上は (負債ではなく) 資産です。

売上債権の実例とは

売上債権の実例としては、以下のようなものがあります。

  • ストアクレジットを利用したお客様に対する売上
  • サブスクリプション (隔月、月次、場合によっては年次)
  • 分割払い
  • 請求金額

以上はすべて売上債権として見なされます。なぜなら、お客様が商品またはサービスを受け取った後、その代金は未払い金となるためです。

売上債権と仕入債務の違い

仕入債務は、売上債権の反対です。 事業者が他者に未払い金がある場合、事業者にはその債務を支払う義務が生じます。

例えば、サプライヤーから商品を受け取って、代金が未払いの場合、この代金は貴社にとっては仕入債務、サプライヤーにとっては売上債権になります。

売上債権の事業上の目的とは

売上債権処理には事業上の目的がいくつかあります。 その一部をご紹介します。

収益創出を最大化

事業の売上債権は収益性を評価するのに不可欠なものであり、最も堅実な収益創出基準の1つです。 つまり、貴社にどれくらいのお金が入ってくるかが分かる最も正確な指標ということです。

事業が利益を生み出しているかどうかを判断するには、売上債権やそれ以外の資産と負債を照らし合わせることです。

資産から負債を差し引いた結果がプラスであれば、事業は黒字ということです。

マイナスの場合は、収益を増やす方法を見つける必要があるでしょう。 売上債権、短期資産、現金支払いのような流動資産は、時間をかけずに収益を増やすには最良の方法です。

さらに、売上債権処理によって、お客様から期日通りに請求書の支払いをしてもらえることを期待できるでしょう。 この処理によって、未払い請求書を把握しながら、未払いのお客様を注視することで、未払い請求書を適時に清算できるようになります。 結果的に、売上債権によって安定したキャッシュフローを確保できるので、事業拡大が可能になるでしょう。

不良債権を削減

事業をしている以上、お客様の不良債権は避けられません。 ただし、適切に売上債権の請求処理をすれば貸倒損失を大幅に削減できます。

売上債権処理を適切に行えば、取引きするのに理想的なお客様と、貸倒損失を起こしそうなお客様をきちんと判断できるでしょう。

お客様ごとの支払い履歴を把握することで、リスクの高いお客様を回避しながら、適時の支払いをするお客様にのみ信用取引きを提供する選択も可能になります。

また、経理部門は、売上債権処理で得られた見識を貸倒引当金の適切な計上に活用することで、事業を財務損失から守る方法が分かるでしょう。

お客様との関係性向上

適切な売上債権システムがあれば、事業者は取引先に充実したカスタマーサービスを提供できます。 お客様との対応をそれぞれにカスタマイズすることで、お客様と貴社ビジネスとの絆を深められます。

こうして信頼を構築することで、顧客ロイヤルティを向上させることが可能です。 取引先は貴社とのビジネスを継続したいと考えるようになるでしょう。

改善点の特定

キャッシュフロー計算書の情報は、正常に機能している業務プロセスと、改善を要する業務プロセスを特定するのに有用です。 また、キャッシュフロー計算書を分析すると、事業の成長戦略に役立つ貴重な見識を得ることも可能です。

売上債権の指標およびKPIとは

売上債権の指標およびKPIは、売上債権処理の効率や、より広範な業務プロセスの全体像を評価するのに利用できる定量的尺度です。

特に注意すべき、非常に重要な売上債権の指標には、以下のようなものがあります。

売上債権回転率

売上債権回転率は、貴社による売上債権の回収効率を測定するものです。 事業者が未払い金のあるお客様から不足額を受け取るのにかかる回数が分かります。

この回転率が高ければ高いほど、売上債権の回収を確保するための請求処理が効果的に行われているということになります。

回転率が低いということは、貴社の経理処理および回収処理、与信方針、顧客審査の見直しが必要ということになるでしょう。

売上債権回転率を計算するには、純信用販売高を平均売上債権額で割ります。

売上債権回転率 = 純信用販売高 / 平均売上債権額

売上債権回転期間 (DSO)

DSOは売上債権の指標の1つで、売上成立後からお客様が支払いをするまでにかかる平均時間を測定するものです。 現金回収戦略の有効性を判断するのに使用します。

DSOが低いときは、お客様が支払いをするまでの時間が短いということです。 つまり、貴社ビジネスはより早く現金を回収できるので、回収戦略が機能しているということになります。

一方、DSOが高いときは、お客様が支払いをするまでの時間が長く、売上債権残高のまま残っているということです。 これは、回収戦略に手を加えて、回収を促す必要があるという兆候かもしれません。

DSOを計算するには、売上債権総額を信用販売高総額で割り、365を掛けます。

DSO = [Total Accounts Receivable / Total Credit Sales] x 365


最短売上債権回転期間

最短売上債権回転期間は、お客様が必ず期限内に支払うと仮定した場合の、売上債権を回収するのにかかる平均日数を表しています。

売上債権回転期間 (DSO) と同じだと感じるかもしれません。 しかし、相違点があります。DSOは延滞債権を含む売上債権すべてが対象であるのとは対照的に、現在の売上債権のみを考慮するという点です。

最短売上債権回転期間からは、DSOと同様に、売上債権処理を改善するのに役立つ見識も得られます。

最短売上債権回転期間を計算するには、現在の売上債権額を信用販売高総額で割り、365を掛けます。

最短売上債権回転期間 = [Current Accounts Receivable / Total Credit Sales] x 365


平均延滞日数 (ADD)

ADDは、売上債権が平均でどれくらい延滞しているかの期間を表しています。

理想的な状況でしたら、延滞金はゼロになります。 よって、ADDはゼロに近ければ近いほどいいということです。 ADDが低いときは、事業において健全なキャッシュフローを維持していることになります。

平均延滞日数 (ADD) = 売上債権回転期間 (DSO) – 最短売上債権回転期間


売上高に対する不良債権比率

不良債権とは、回収できていない売上債権を指します。 この指標では、事業収入のうち不良債権化する割合が分かります。 事業の請求処理や回収処理を改善するのに有用です。

売上高に対する不良債権比率が高い場合 (25%超) は、回収率改善のために、積極的に請求書を発行したり、定期的にフォローアップしたりなど、直ちに手を打つ必要があることを表しています。

売上高に対する不良債権比率が常に15%を下回るようにして、お客様の不良債権の償却による収益減を防ぎましょう。

売上高に対する不良債権比率の計算式:未回収売上高 / 年間売上高 x 100


回収効率指数 (CEI)

CEIは、1ヵ月や1年といった一定期間における、売上債権部門による売上債権の回収効率を測定するものです。

平均的な企業のほとんどは、CEI100%を目指します。 つまり、売上債権部門は一定期間でお客様が支払うべきお金をすべて回収したということになります。 しかし、容易いことではないでしょう。 80%以上の数値の場合、担当部門の回収が正常に機能しているということになります。

CEIを最適化するには、以下の方法があります。

  • 債務者の声を傾聴し、適切にコミュニケーション
  • 定期的にフォローアップ
  • 請求処理の際に、請求書にミスがないことを確認して、取引先からの申立てを防止 (支払い遅延の原因となるため)


回収ごとの運用コスト

回収ごとの運用コストは、売上債権の回収にかかる費用を測定するものです。

すべての回収管理業務の運用コストを分析するために不可欠なKPIです。 これには、あらゆる売上債権ソフトおよび連絡手段のコストが入ります。

運用コストが低ければ低いほど、利益率は高くなります。

事業者は売上債権自動化ソリューションを利用することで、売上債権コストを削減し、事業経費を抑制できます。


売上債権処理

売上債権処理とは、明確な5ステップからなる、詳細に明文化された手順です。

与信決定

企業は支払い条件を準備し、お客様の与信額を決定します。 与信額決定には、お客様の信用履歴を確認し、クレジット利用率の状況を把握する必要があります。それによって、一定期間内に支払いが可能かどうかを判断できるからです。

請求処理

請求処理は、商品やサービスをお客様に納品した後に行います。 手動で請求処理を行うには、紙の請求書を準備の上、郵送するか、Eメールを利用します。

電子請求書には、請求書をEメールで送信したり、請求・売上債権管理ソフトで作成、送信したりするなど、さまざまな形態があります。

信頼性の高い請求・売上債権管理ソフトとご利用中の会計ソフトを連携させ、この手順を自動化するとよいでしょう。

というのは、請求処理には時間的制約があり、お客様の請求書受取りが早ければ早いほど、適時に支払ってもらえる可能性が高まるからです。

支払い受け付け

電信送金、バーチャルクレジットカード、ACH決済、紙の小切手など、さまざまな方法でお客様から支払いを受け取れます。

当社は、お客様が簡単かつ便利に支払いができるように、さまざまなオンライン決済方法を用意することをお勧めしています。

ただし、各オンライン決済方法を設定し、運用するには費用がかかります。 選択したお支払方法にかかるすべての費用を、貴社ビジネスで対応できるか検討しましょう。

消し込み

消し込み処理では、お客様から支払いを受領したことを確認し、請求書を支払い済みとします。

企業には何千件もの入金があるものなので、手間のかかる作業になります。 手順をシンプルにするには、自動消し込みソフトを使用するとよいでしょう。

代金回収

合意した期日までに支払いの受領および充当がされなければ、延滞金として扱われます。

そうなると、回収担当部門に転送され、回収担当者がお客様と連絡を取り、債権を回収するために尽力します。

売上債権の利点

売上債権には、短期資産であると同時に流動資産でもあるという性質があります。 短期資産としての状態では、お客様は1年以内に未払い金を支払わなければならないということです。

売上債権は流動資産であるため、利用しやすくなっています。 売上債権は、 日常使いの資金源として利用可能な、利便性の高い事業資金の一部です。

売上債権を担保に融資を申込んだり、短期的な債務履行に利用したりすることができます。

このように、売上債権は利便性が高く、回転が早いという2つの特徴があるため、事業者にとって日常の運転資金源として必要不可欠なものとなっています。

売上債権の弱点

売上債権の一番の弱点は、お客様が未払い金を必ず支払うという保証がないことです。

当然ながら、特に請求書や署名済み契約書のような証拠書類がある場合は法的義務が発生します。 しかし、それでもお客様は未払い金を放置するかもしれません。

特に比較的少額の場合、損失または貸倒費用として計上した方がよい場合もあります。 なぜなら、未払い金について訴訟を起こしたり、あるいはその他の方法で (貴社のリソースを使用して) 追跡したりした場合、その結果得られるものより費用の方がはるかに上回る可能性があるからです。

お客様から入金がないときは

お客様から期限内に支払いが行われない場合、以下の措置を取りましょう。

支払い遅延客の除外

債務不履行を繰り返すお客様がいる場合、そのお客様と貴社ビジネスとの信用関係の見直しを検討しましょう。 まずは警告を送り、それでも債務不履行が続く場合は信用取引きを終了することもできます。

支払い期日を守るお客様とだけ信用取引きを継続しましょう。

売上債権を長期手形に変換

お客様の売上債権を受取手形に変換すると、お客様の債務返済期間を延長できます。 未払い金を貸倒にしないで済ませるには、これが最善の方法です。

未払い金は受取手形として、会計帳簿上、流動資産または固定資産に計上します。

債権回収会社を利用

また、債権回収会社を利用して、貴社の代わりにお客様へのフォローアップ、代金回収をしてもらうことも可能です。

売上債権処理を最適化する方法

ここでは、売上債権処理をさらに効率よく管理しながら、回転率を上げるための専門家からのヒントをご紹介します。

明瞭な与信方針を策定

お客様には、貴社からクレジットで購入する際、その合意内容についてきちんと知ってもらう必要があります。 また、お客様が貴社の利用条件に同意したという証拠も必要です。 債務者が義務を果たしてくれるように、分かりやすく明文化された与信方針や契約書を作成することは有用です。

また、与信方針の策定をきっかけに、理想的な債務者の資格要件をまとめ、これに当てはまるような債務履行を期待できる法人・個人のみを対象とするようにしましょう。

お支払方法の選択肢を拡充

お客様にさまざまなお支払方法を提示することで、後日、債権回収する必要性がなくなるかもしれません。 現金での直接支払いや電子資金決済に加え、海外への支払いには専用の金融サービスを利用することも可能です。 支払う側、受け取る側双方にとって支払いが迅速かつ簡単になるようにしましょう。

架電や定期的な延滞通知

未払い金に対するフォローアップは不可欠です。 支払いを促すことで、本当に忘れているお客様が思い出すこともあるでしょう。 また、未払い金を見落として無駄に損をすることもなくなります。

手続きを自動化

売上債権処理では、さまざまな手続きを自動化できます。 例えば、無料の請求書作成ツールといった自動テンプレートを使って請求処理を自動化したり、分割払いやサブスク用に定期支払いの請求書を設定したりできます。 適切なソフトウェアを使用すれば、お客様への延滞通知を自動化することも可能です。

Payoneerでは、QuickBooks国際商取引の決済ソリューションとの連携が可能です。 連携することで、請求書との照合を自動化し、請求書と入金の突き合わせができます。 また、売上債権や仕入債務を照合することで、より正確に利益率を測れます。

まとめ

企業経営には、柔軟性と規制の間の一定したバランスが必要です。 当然のことながら、お客様との関係性構築は重要ですので、クレジットによる販売でお客様との信頼醸成が可能になります。 しかし、これを行うには、明確な方針および規制、そして管理が行き届いたシステムが必要となります。

中小企業経営者やフリーランスの方は、売上債権処理を理解して最適化することで、資金繰りの改善がはかれます。

上記の情報と、今回ご紹介した手順のヒントを活用しながら、売上債権の管理を効率的に行いましょう。

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